古代の歴史

熱ルミネッセンス(TL)法による年代測定の原理と適用範囲

熱ルミネッセンス(TL)法とは

熱ルミネッセンス(Thermoluminescence:TL)法は、石英や長石などの鉱物を含み、数百度の高温で加熱された経験を持つ材料に特化した年代測定手法です。土器・陶磁器・テラコッタ・煉瓦といった焼き物や、窯・炉床など、過去に火で焼かれた遺構・遺物の年代を知るうえで非常に有効です。

標準的な測定条件が整えば、おおむね50年から60万年前までの範囲で年代を推定することができます。

測定できる主な対象

  • 土器・陶器・磁器などの焼き物
  • テラコッタや煉瓦などの建築材料
  • 窯、炉(かまど)、溶融地帯など焼けた遺構

熱ルミネッセンスの原理

陶器の主要な構成成分である石英や長石の一部は「熱ルミネッセンス性」を持っています。これらの鉱物は、自然放射線(アルファ線・ベータ線・ガンマ線)との相互作用によって生じた電子を、結晶内部の安定なトラップ(捕獲中心)に蓄えていきます。

この電子は、数百度という高温で加熱されると熱エネルギーを受け取ってトラップから解放され、その際に光を放出します。これが「熱ルミネッセンス」です。放出される光の量は、蓄積していた電子の量、すなわち受けてきた放射線量に対応します。

窯での焼成が「時計のリセット」になる

粘土が窯で焼かれるとき、それまで地質学的な時間の中で蓄積されていたTLはすべて消去されます。混合物に加えられた成分に含まれていたTLも同様です。ここで時計はゼロに戻り、以後、時間の経過とともに再びTLが蓄積していきます。蓄積の速度は、対象物自体および周辺環境の放射能濃度が高いほど速くなります。

したがって、観測されたTLの総量は、対象物の年齢と、それが受けた放射線照射量の両方を示す指標となります。

年代計算の基本式

試料のTLを測定すれば、間接的にその試料を通過した放射線の総量がわかります。さらに試料および環境の放射能を測定することで、次のような年齢の基本式が成り立ちます。

年齢(年)= 吸収した全放射線量 ÷ 年間吸収放射線量

結果の解釈における注意点

TL法による年代は、あくまで対象物が最後に受けた焼成の時点を指します。この点は結果を解釈・評価する際に常に念頭に置く必要があります。たとえば、後世の火災で焼かれたもの、偶然加熱されたもの、修復の際に加熱されたもの、あるいは転用(再利用)された資料では、本来の製作年代とは異なる値が得られる可能性があるためです。

また、他の物理測定と同様、得られた年代には必ず誤差が伴います。つまり、焼成が行われたのは「最大確率の年代」を中心とする一定の時間幅の中ということになります。関係する諸要因と実験評価の複雑さを考慮すると、平均的な全体誤差は7〜10%程度と見積もられ、特別な条件下でのみ5〜6%まで低減可能です。