古代の歴史

1200年前の「電話」が実在した?古代チムー文明が生んだ驚異の通信装置

1200年前の「電話」が実在した?古代チムー文明が生んだ驚異の通信装置

南米ペルー、チムー帝国の首都として栄えたチャンチャンの遺跡から、1200〜1400年前にさかのぼるとみられる通信システムが発見されました。この小さな装置は、西半球における最古の「電話技術」として知られています。

ひょうたんと綿糸だけで作られた古代の通信機

1200年前の「電話」が実在した?古代チムー文明が生んだ驚異の通信装置

装置の構造は驚くほどシンプルです。長さ8.9cmのひょうたんを2つ用意し、表面に樹脂を塗って音の送信器と受信器とします。それぞれのひょうたんの底には革の膜が張られ、両者をつなぐ全長22.8メートルの糸は綿で紡がれていました。遺物はあまりにも繊細で実際の動作実験は不可能でしたが、研究者たちは音響学的な分析を通じて、この装置がどのように声を伝えていたのかを解き明かしました。

文字を持たない社会が生んだ「天才の結晶」

1200年前の「電話」が実在した?古代チムー文明が生んだ驚異の通信装置

中央アンデス文明の第一人者であり、米国国立アメリカインディアン博物館(NMAI)のキュレーターを務める考古学者・人類学者のラミロ・マトス氏は、こう語ります。

「これは極めてユニークな遺物です。世界に類例がありません。文字というものを持たなかった先住民社会の天才性から生まれたものなのです。この道具は特定の目的のために設計された通信手段であり、おそらく権力の中庭に控える廷臣たちへ命令を伝えるために使われたのでしょう」

チムー人は徹底した上下関係の社会として知られていました。その創世神話によれば、太陽が世界に人間を生み出した際、支配階級は黄金の卵から、その妻たちは銀の卵から、それ以外の人々は銅の卵から生まれたといいます。つまり人々は生まれたときから対等ではなかったのです。この「電話」があれば、王や貴族は臣下と直接顔を合わせる必要がなくなり、上層階級の安全と威厳を保つことができました。

帝国の栄華と終焉

1200年前の「電話」が実在した?古代チムー文明が生んだ驚異の通信装置

チャンチャンの黄金時代は、1470年頃にインカ帝国がこの都市を征服したことで幕を閉じます。さらに1532年頃、スペインの征服者フランシスコ・ピサロがかつてのチムーの首都に足を踏み入れたとき、そこはほぼ完全に放棄された廃墟となっていました。ただし遠征隊の記録には、貴金属で装飾された壁や建築物を目撃したという言及が残っており、それらの財宝はスペイン人征服者たちによって瞬く間に奪い去られたと伝えられています。