古代の歴史

『ロミオとジュリエット』における「thither」の意味とは?

「thither(ジダー)」とは何を意味する言葉?

「thither」は古風な英語表現で、「その場所へ」「あちらの方へ」という意味を持つ副詞です。現代英語ではほとんど使われなくなりましたが、シェイクスピアの時代の英語では一般的な語であり、『ロミオとジュリエット』をはじめとする彼の戯曲にも登場します。

有名なバルコニーの場面

第2幕第2場として知られる「バルコニーの場面」では、夜の庭に忍び込んだロミオが、ジュリエットの部屋の真下に立っています。それを知らないジュリエットは、バルコニーからこう独り言を漏らします。

O Romeo, Romeo, wherefore art thou Romeo?
(ああ、ロミオ、ロミオ、どうしてあなたはロミオなの?)
Deny thy father and refuse thy name;
(お父様を否定して、あなたの名前を捨てて)
Or, if thou wilt not, be but sworn my love,
(もしそれが嫌なら、ただ私の恋だと誓って)
And I'll no longer be a Capulet.
(そうすれば私はもうキャピュレット家の人間ではなくなるわ)

さらに彼女は続けます。「モンタギューという名前こそが私の敵。あなた自身はあなたであって、モンタギューではない。手でも足でも腕でも顔でもない、人の体のどこがモンタギューだというの?」と。この思考は、「名前など何の意味があるの? バラをどんな名で呼んでも、その香りは変わらない」という有名な一節へとつながっていきます。

台詞から読み取れるジュリエットの想い

この場面でジュリエットは、ロミオを「thou(そなた)」と呼びかけ、「Deny thy father and refuse thy name(父を否定し、名を捨てよ)」と訴えています。この言葉の意味は、「父親を父親として認めることをやめ、姓を変えてしまえ」ということです。

つまりジュリエットは、ロミオの名前や家柄ではなく、ロミオという人間そのものを愛しているのです。彼女にとって大切なのは「モンタギュー家の息子」という肩書きではなく、目の前にいるロミオ本人でした。

なぜ名前を捨てるよう求めたのか

ジュリエットがロミオにモンタギューの名を捨ててほしいと願うのは、モンタギュー家がジュリエットの実家であるキャピュレット家と長年にわたり争い続ける宿敵だからです。二人の恋が許されないものとなっている最大の原因は、この家同士の確執にあります。名前さえ捨てれば、家のしがらみから解放されて自由になれる――そんな切実な願いが、この台詞に込められているのです。

「thither」はこの場面の台詞には含まれていない

一点注意しておきたいのは、上記のバルコニーの場面の台詞そのものの中には、「thither」という単語は実際には含まれていないということです。この場面は「名前」をめぐるジュリエットの独白が中心であり、「thither」は劇中の他の場面・他の台詞で用いられる語です。したがって、「thither」の意味を知りたい場合は、「その場所へ、あちらへ」という行き先・方向を示す副詞であると理解しておけば十分でしょう。

まとめ

  • 「thither」は「その場所へ」「あちらへ」を意味する古風な英語の副詞
  • バルコニーの場面でジュリエットは「父を否定し、名を捨てよ」とロミオに訴える
  • 彼女はロミオの名前ではなく、ロミオ本人を愛している
  • モンタギュー家とキャピュレット家の対立が二人の恋を阻んでいる
  • 引用された台詞の中に「thither」という語自体は登場しない