アメリカ合衆国における19世紀の労働者の賃金は、現代の基準と比べると非常に低い水準でした。産業、地域、技能レベルによって正確な賃金額には差がありましたが、ここでは職種別に一般的な概観をご紹介します。あわせて、2023年のドル価値に換算した参考額も併記します。
農業従事者の賃金
- 農場労働者: 月10〜20ドル+衣食住付き(2023年換算で約249〜499ドル)
- 熟練農業労働者(鍛冶屋や大工など): 月25〜30ドル+衣食住付き(同623〜748ドル)
工場労働者の賃金
- 未熟練の工場労働者: 日当1〜2ドル(同24〜49ドル)
- 熟練工場労働者(機械工や織物職人など): 日当2〜3ドル(同49〜74ドル)
- 炭鉱労働者: 日当0.75〜1.50ドル(同18〜36ドル)
建設作業員の賃金
- 雑役夫(レイバー): 日当1.50〜2ドル(同36〜49ドル)
- 熟練建設作業員(大工や石工など): 日当2.50〜3ドル(同61〜74ドル)
家庭内労働者の賃金
- 住み込みのメイドや使用人: 週1.50〜3ドル+衣食住付き(同36〜72ドル)
- 日雇い労働者(時間・日単位で勤務): 日当0.50〜1ドル(同12〜24ドル)
専門職の賃金
- 教師(地域や経験年数により変動): 月25〜50ドル(同623〜1,246ドル)
- 弁護士: 月50〜100ドル(同1,246〜2,492ドル)
- 医師: 月100〜200ドル(同2,492〜4,984ドル)
低い賃金がもたらした社会不安
この時代は現在に比べて物価が低かった点には注意が必要です。それでもなお、多くの労働者にとって、住宅・食料・衣類といった基本的な生活必需品を賄うには賃金が不十分でした。その結果、広範囲にわたる貧困、労働争議(ストライキ)、そして深刻な社会不安が蔓延することになりました。
性別・人種による賃金格差
さらに、当時の賃金は性別や人種といった要因にも大きく左右されました。女性労働者やアフリカ系アメリカ人の労働者は、男性や白人の労働者と同じ仕事をしていても、著しく低い賃金しか受け取れないのが一般的でした。
19世紀を通じた賃金の変遷
19世紀全体を通してみると、特に後半の数十年において、賃金や労働条件には徐々に改善の兆しが見られました。労働組合の結成や法整備の進展が背景にあります。しかしながら、大きな格差や経済的な課題は容易には解消されず、20世紀に入ってからも長く残り続けることとなりました。