中世ヨーロッパにおける言語の実態
中世の日常会話で使われていた言語は、地域や時代によって大きく異なっていました。ヨーロッパにおいてラテン語は教会、学問、そして外交の場における共通言語でしたが、一般の人々が日常的に話す言葉ではありませんでした。庶民の間で話されていたのは、現在のヨーロッパ諸言語の祖先にあたる様々な俗語(vernacular)でした。
中世の主要な俗語
中世ヨーロッパで広く話されていた主な俗語は以下の通りです。
- 古英語:5世紀から12世紀にかけてイングランドで話された言語
- 古フランス語:9世紀から14世紀にかけてフランスで話された言語
- 古高ドイツ語:8世紀から16世紀にかけてドイツ地方で話された言語
- 古ノルド語:8世紀から14世紀にかけてスカンディナヴィアで話された言語
- 古イタリア語:10世紀から14世紀にかけてイタリアで話された言語
- 古スペイン語:10世紀から15世紀にかけてスペインで話された言語
その他の多様な言語
これらの主要言語以外にも、中世ヨーロッパでは数多くの俗語が話されていました。例えば、
ブルトン語、カタルーニャ語、コーンウォール語、ガリシア語、オック語、ウェールズ語などが挙げられます。
このように中世の言語状況は極めて多様であり、地域ごとに独自の発展を遂げていたのです。
日常語と文学語の違い
見逃されがちですが重要な点として、中世の日常会話の言語は、同時代の文学語とは大きく異なっていたことが挙げられます。
文学作品はラテン語、あるいは高度に様式化された俗語で書かれることが一般的でした。一方、人々が日常生活で話していた言葉は、よりくだけた表現を含み、地域差や個人差も豊かなものでした。
つまり、当時の文献に残る言語がそのまま人々の話し言葉だったと考えるのは必ずしも正しくないのです。