インカ帝国で使われた黄金の大部分は、帝国の支配領域内にある鉱山から採掘されたものです。中でも有名なのが、現在のボリビアにあたるポトシ(Potosí)やポルコ(Porco)の鉱山、そして現在のペルーに位置するクスコ周辺やカラバヤ(Carabaya)地方の鉱山です。これらの産地は、インカが広大な領土を統治するうえで重要な資源の供給源となっていました。
帝国内の主要な黄金の産地
アンデス地域には金を含む鉱床が点在しており、インカ人は川砂金の採取や露天掘りといった手法で黄金を採集していました。標高の高い厳しい環境での採掘作業は過酷を極め、その労働力としてはミタ(Mit'a)と呼ばれる公共勤務制度によって動員された人々が担ったとされています。
貿易と征服による獲得
自国での採掘に加えて、インカは貿易や軍事征服を通じても黄金を手に入れていました。帝国に服属した諸民族に対しては、しばしば黄金を貢物(みつぎもの)として納めるよう求めており、これも帝国の金の蓄積を支える大きな要因でした。
インカにとっての黄金の意味
興味深いことに、インカの人々にとって黄金は貨幣としての価値を持つものではなく、「太陽の汗」と呼ばれる神聖な金属として捉えられていました。黄金は太陽神インティへの奉納品や宗教儀式の装飾、王族の装身具などに用いられ、権威と神聖さの象徴だったのです。この精神的・宗教的な価値観こそが、インカ社会における黄金の生産と収集を後押ししていたといえるでしょう。