恩寵の巡礼とは
恩寵の巡礼は、1536年から1537年にかけてイングランド北部で発生した、チューダー朝期最大級の民衆反乱です。ヘンリー8世による修道院解散令や宗教改革に反対した人々が立ち上がり、ヨークシャーの法律家ロバート・アスクを指導者として大規模な運動へと発展しました。
反乱の勃発(1536年10月)
1536年10月、ハル出身の法律家ロバート・アスクは反乱軍を率いてヨークに入城しました。反乱軍が掲げた主な要求は次の通りです。
- カトリック信仰の回復
- 修道院解散の中止
- 国王首席大臣トマス・クロムウェルの罷免
ドンカスターでの対峙と休戦(1536年11月~12月)
反乱軍は南へ進軍し、ドンカスターでノーフォーク公率いる王立軍と対峙しました。両陣営は交渉の場を設け、最終的に休戦で合意します。政府側は要求の検討と参加者への赦免を約束し、反乱軍は一時解散することになりました。
再燃する騒乱と指導者の処刑(1537年)
しかし1537年に入ると、北部各地で再び騒乱が発生し、ヘンリー8世は態度を硬化させます。アスクは一時、国王に謁見して厚遇を受けたものの、再反乱の発生によって信頼を失いました。その結果、アスクをはじめとする反乱の指導者たちは相次いで逮捕され、1537年には処刑されました。アスク自身も同年7月にヨークで処刑されています。
歴史的意義
恩寵の巡礼は、イングランド史において極めて重要な出来事でした。この反乱は、庶民の不満が持つ力と、イングランドにおける反乱の潜在的可能性を示すとともに、国内の宗教的な分裂の深さ、そしてヘンリー8世が宗教改革を推し進めるうえで直面した大きな困難をも浮き彫りにしました。