考古学的発見

アントニオ・ガジャルド・バジャルト氏(パラルク財団会長)インタビュー――考古学と古生物学を支える民間の力

歴史や考古学、文化全般が、ビジネスや企業の世界とは対極にあるように見える国――スペイン。しかし、その両方の志を見事に融合させた人物が存在する。アントニオ・ガジャルド・バジャルト氏(1936年、バルセロナ生まれ)は、一族が経営する製薬グループの会長を歴任し、華々しいビジネスキャリアを築いてきた。家族企業研究所(Instituto de la Empresa Familiar)の副会長や、家族企業ネットワーク(FBN)評議会のメンバーを務めるほか、スペイン王立医学アカデミーの通信会員にも名を連ねている。

その一方で、氏の文化の世界への貢献もまた極めて大きい。私蔵コレクションから20点の作品をカタルーニャ国立美術館(MNAC)に寄贈した。これは同館が過去30年間に受けた寄贈の中で最も重要なものとされている。さらに、考古学と古生物学を専門とするパラルク財団を設立し、自ら会長を務めている。今回、財団設立の理由、目的、そして運営の仕組みについて話を伺った。

なぜ考古学・古生物学の財団を創設したのか?

財団名の「Palarq」は、古生物学(Paleontología)と考古学(Arqueología)を組み合わせた造語だ。スペインは国内に豊かな遺跡を抱えるだけでなく、国内外で数多くの発掘調査プロジェクトを展開している。しかし、公的資金だけでは研究を十分に支えきれないのが実情である。ガジャルド・バジャルト氏は、ビジネスで培った経験と資産を、人類共通の知的遺産であるこれらの学問分野に還元したいと考え、財団の設立を決意した。

財団はどのように運営されているのか?

パラルク財団は、スペインの研究チームが国内外で実施する考古学・古生物学の研究プロジェクトや発掘調査に対して助成金を提供している。応募されたプロジェクトは、各分野の専門家からなる審査委員会によって厳正に評価され、学術的価値や社会的意義の高いものに資金が配分される。この仕組みにより、民間の資金が透明性をもって研究現場へ届けられている。

パラルク財団 全国考古学・古生物学賞とは?

同財団が主催する「全国考古学・古生物学賞(Premio Nacional de Arqueología y Paleontología)」は、スペインの考古学・古生物学分野で最も権威ある賞の一つだ。優れた研究プロジェクトに対して高額な助成金(第1回となる2018年の賞金は8万ユーロ)が授与され、スペインの研究チームによる国内外の発掘調査や研究を大きく後押ししている。受賞プロジェクトには、アフリカでの古人類学調査やイベリア半島の先史時代遺跡の研究など、国際的にも注目度の高いものが名を連ねる。

こうした取り組みは、スペイン社会における研究の可視化に必要か?

考古学や古生物学は、一般の人々にとって縁遠い学問と思われがちだ。しかし、人類の起源や過去の文明を知る手がかりを提供するこれらの研究は、社会全体の知的資産である。民間財団や賞といったイニシアチブは、研究の存在と価値を広く社会に伝え、若い世代の関心を喚起する上で重要な役割を果たしている。

若い世代にこれらの学問をどう近づけるか?

氏の経験から浮かび上がるのは、教育と体験の重要性だ。学校教育における科学・歴史教育の充実に加え、発掘現場の見学や博物館での体験プログラム、メディアやデジタル技術を活用した情報発信など、多様な接点をつくることが、若者と考古学・古生物学との距離を縮める鍵となる。

スペインの考古学・古生物学の未来は?

インタビューの締めくくりとして伺ったのは、スペインの考古学・古生物学の将来についてだ。アタプエルカの遺跡群に代表されるように、スペインは人類進化研究において世界有数の地位を占めている。民間の支援と公的研究機関の力を組み合わせることで、この分野はさらに発展していくことが期待される。アントニオ・ガジャルド・バジャルト氏のご厚意に感謝を申し上げるとともに、パラルク財団の今後の活動に大きな期待を寄せたい。