イングランド北東部、ノーサンバーランド州の海岸沖に浮かぶリンディスファーン島で、アングロサクソン文字が刻まれた墓石が出土しました。調査チームは、この発見こそ7世紀に建立されながらも所在が不明だった「失われた修道院」を突き止める決定的な手がかりになると確信しています。
ヴァイキングに破壊された伝説の修道院
リンディスファーン修道院は、635年にノーサンブリア王国のアングロサクソン王オズワルドによって創建されました。その名はキリスト教世界に広く轟きましたが、当初の建物がどこに立っていたのかは今も謎のままです。その最大の理由が、793年に始まるヴァイキングによる襲撃と略奪でした。
修道院は数世紀後にホーリー島へ再建されましたが、元の所在地はついに特定できませんでした。長年にわたる探索が実を結ばない中、今回の発見が専門家たちを大きな一歩へと導いています。
発見のきっかけを作ったのは、ある無名のボランティア考古学者です。クラウドファンディングで2万5000ポンドを集め、ダラム大学のデイヴィッド・ペッツ教授による原位置の特定を支援した「DigVentures」プロジェクトに参加する60人の発掘メンバーの一人でした。調達された資金をもとに新たな物理探査が実施され、地下から興味深い「手がかり」が検出。これを受けて、中世に建てられた古いプリオリー(小修道院)のほど近くで、新しい試掘溝の調査が開始されたのです。
リンディスファーン福音書が生まれた場所か
今回注目されているのは、半円形に加工された石碑です。表面にはアングロサクソン文字が刻まれ、7世紀のものと年代づけられました。この墓石は、現在ロンドンの大英図書館が所蔵する装飾写本「リンディスファーン福音書」が記されたとされる本来の建物の存在を裏付ける、最初の物理的証拠と目されています。さらに近くからは人骨の断片も見つかっており、墓地の存在が示唆されています。
あらゆる角度から見たリンディスファーンの石 © DigVentures on Sketchfab
「石が瓦礫の構造物や人骨の埋葬のすぐそばにあったことは、私たちが探し求めてきた修道院複合体の一部を発見したことを強く示唆しています」とペッツ教授は語ります。
彫刻された石には十字架の一部と、現在も解読が進められている銘文が残されています。銘文に含まれる名前の末尾には「FRITH」という文字列があり、これはアングロサクソン人の名前にごく一般的な要素です。
ノーサンブリア王国の心臓部
研究者とボランティアたちは、ノーサンブリア古代王国の政治・宗教の中心であったこの失われた聖域に少しずつ迫っていることに喜びを表しています。フランク王国でダゴベルト1世が支配していた時代、海を越えて建てられたこの最初期の修道院は、イングランドにおけるキリスト教化の出発点となったのです。