
火曜日と金曜日、「縁起が悪い」とされる二つの曜日
イタリアをはじめとする南欧諸国では、火曜日は金曜日と並んで「何かを始めるには縁起の悪い日」と、古くから考えられてきました。昔のことわざには、こんな言葉があります。
「火曜日には結婚するな、旅に出るな、新しいことを始めるな」
結婚式の日取りを決める際にも、この言い伝えを気にする人は今でも少なくありません。では、なぜ火曜日がそれほどまでに忌み嫌われるようになったのでしょうか。
その起源は古代ローマにあった
この信仰のルーツをたどると、古代ローマに行き着きます。ローマでは一週間の各曜日が特定の神々に捧げられており、火曜日は軍神マルス(Mars)に捧げられた日でした。ラテン語で火曜日を意味する「dies Martis(ディエス・マルティス)」は、直訳すると「マルスの日」です。
マルスは戦いと不和を司る神でした。戦争や争いの象徴である神の日にあえて重要な行動を起こすのは不吉だとされ、結婚や出発、事業の開始といった人生の節目となる出来事は、この日に行うべきではないと考えられるようになったのです。
ギリシャ神話とのつながり
マルスに相当するギリシャ神話の神がアレス(Ares)です。アレスもまた戦乱と暴力を象徴する神であり、その荒々しい性格ゆえに人々から恐れられていました。「火曜日=戦の神の日」という発想は、ローマ文化がギリシャ文化の影響を強く受けていたこととも深く関わっています。
金曜日の不吉さとは由来がまったく違う
興味深いことに、同じ「不吉な日」とされていても、金曜日の由来は火曜日とは異なります。金曜日が忌み嫌われる背景にはキリスト教の伝承があり、イエス・キリストが磔刑に処されたのが金曜日だったとされることが大きな要因です。つまり、火曜日の不吉さは異教の神々への信仰に、金曜日のそれはキリスト教の伝統に根ざしているのです。
現代に残る古代の言い伝え
現在では単なる迷信として片付けられることも多いこの言い伝えですが、イタリアなどでは今なお「17日の火曜日」や「13日の金曜日」を避ける人が少なくありません。曜日と神々を結びつけた古代ローマの暦の名残が、こうした日常の習慣の中に静かに息づいているといえるでしょう。