エリザベス朝演劇の繁栄を支えたのは、地方自治体ではなく王室と貴族だった
16世紀後半から17世紀初頭にかけてのイングランド、いわゆるエリザベス朝時代には、シェイクスピアやクリストファー・マーローといった天才劇作家たちが登場し、演劇がかつてない繁栄を遂げました。では、この繁栄は地方自治体の支援によってもたらされたのでしょうか?結論から言えば、答えはノーです。エリザベス朝演劇を支えた中心的な存在は、女王エリザベス1世と富裕な貴族階級でした。
女王エリザベス1世――芸術の偉大な庇護者
エリザベス1世は芸術の熱心な後援者(パトロン)であり、演劇鑑賞を何よりも愛しました。彼女は宮廷に劇団を招いて上演を行わせるなど、王室の権威をもって演劇を保護しました。女王自身の後援は、演劇が単なる庶民の娯楽ではなく、社会的・文化的にも認められた芸術であることを示す大きな後押しとなったのです。
貴族たちの経済的支援が支えた豪華な舞台
さらに重要なのが、富裕な貴族たちによる庇護(パトロネージュ)の仕組みです。当時の劇団は、有力貴族の名を冠して活動するのが一般的でした。有名なところでは、シェイクスピアが所属していた「宮内大臣一座」や、これに対抗した「海軍大臣一座」などが挙げられます。
こうした貴族の後援により、劇団は安定した資金を確保でき、衣装や小道具、舞台装置に力を注いだ豪華な公演を実現することができました。堅固な経済基盤があったからこそ、質の高い作品が次々と生まれ、幅広い観客を魅了し続けられたのです。
むしろ冷たかった地方自治体
興味深いことに、当時のロンドン市当局は演劇に対してむしろ批判的な姿勢を見せていました。ペストなどの疫病流行への懸念や、清教徒たちによる道徳面での反対運動もあり、市内での演劇活動はしばしば制限されました。そのため、劇場はロンドンの市域外、例えばテムズ川南岸のサザーク地区などに建設されることになります。有名なグローブ座(1599年開場)もその一つです。
まとめ
エリザベス朝演劇の黄金時代は、地方自治体の支援ではなく、女王エリザベス1世と貴族階級による強力な後援があってこそ実現しました。王室の威光と貴族の財政的支援という二本柱が、演劇文化の華やかな発展を可能にしたのです。