エリザベス朝時代の演劇は日没から始まっていたのか?
いいえ、エリザベス朝時代の演劇公演が日没に始まることはありませんでした。むしろ、公演は通常午後2時から4時の間に始まり、数時間にわたって上演されるのが一般的でした。
なぜ午後に上演されたのか?
その最大の理由は、当時の劇場が屋外(野外)構造だったことにあります。シェイクスピアの名作が初演されたグローブ座をはじめとするエリザベス朝の劇場には屋根がなく、舞台を照らすことができたのは自然光だけでした。
電気照明が存在しない時代、ろうそくや松明といった人工的な光源は高価であり、広大な野外劇場全体を照らすには力不足でした。そのため、日が暮れて視界が悪くなる前に上演を終えること、少なくとも重要な場面は明るいうちに演じきることが極めて重要だったのです。
公演の実際の流れ
午後早くに幕を開けた公演は、夕暮れが訪れる頃には終演となっていました。この時間設定には実用的なメリットがありました。
- 観客が自然光のもとで舞台をはっきりと見ることができた
- 俳優の表情や身振りが遠くまで伝わりやすかった
- 公演後も帰宅の時間を十分に確保できた
また、上演がある日は劇場の屋根の上に旗が掲げられ、それが合図となって町中に知らされていました。こうした仕組みと相まって、午後開演というスタイルはエリザベス朝演劇の標準的な形として定着していったのです。