歴史物語

J.D.ロックフェラーは「強盗男爵」か、それとも「産業界のリーダー」だったのか?

ジョン・D・ロックフェラー(John D. Rockefeller)は、多くの歴史家から「強盗男爵(ロバー・バロン)」と見なされています。石油業界を支配し、莫大な富を築き上げるために、非倫理的なビジネス手法を用いた冷酷な実業家だったという評価です。

強盗男爵と呼ばれる理由

彼が用いたとされる主な手法には、以下のようなものがあります。

  • 価格を操作するために、トラスト(企業連合)を秘密裏に結成した
  • 競合他社を差別的に扱い、事業からの撤退へ追い込んだ
  • 州政府や連邦政府に働きかけ、自社に有利な法律の制定を促した
  • 労働者の権利運動やストライキを過酷な手段で鎮圧した

彼が創設したスタンダード・オイル(Standard Oil)は、最盛期にはアメリカの石油精製の約90%を支配する巨大独占企業へと成長しました。

成功の裏にある大きな代償

ロックフェラーは間違いなく成功した実業家でしたが、その成功は多くの労働者や中小の競合他社にとって大きな犠牲の上に成り立っていました。過当競争による値下げ攻勢や買収によって追い詰められた事業者は少なくなく、労働環境も劣悪だったと伝えられています。

政府による独占解体

こうした状況を受け、ついには政府が介入することになりました。1890年に成立したシャーマン反トラスト法(Sherman Antitrust Act)に基づき、1911年には米国最高裁判所の判決により、スタンダード・オイルは34の会社に分割されました。これはアメリカにおける独占禁止政策の歴史において象徴的な出来事となっています。

評価は今も二分される

一方で、ロックフェラーを「産業界のキャプテン」、すなわち業界を牽引した先駆者と評価する見方もあります。効率的な経営と規模の経済によって石油価格を安定・低減させ、アメリカ産業の近代化に貢献したという点です。また、晩年には慈善活動に力を注ぎ、教育や医療の分野へ多大な寄付を行ったことも広く知られています。

強盗男爵であったのか、それとも産業発展の立役者であったのか――ロックフェラーの評価をめぐる議論は、今日なお続いています。