「代表なくして課税なし(No taxation without representation)」は、18世紀のアメリカ植民地で生まれた政治スローガンです。イギリス政府が植民地の人々に税金を課しながら、その使途について一切の発言権を与えなかったことへの強い不満を表現したものでした。
植民地人の主張
植民地の人々は、自らもイギリス市民と同じ権利と特権を享有する資格があり、その中には議会における代表権も含まれるべきだと主張しました。彼らはイギリス政府に税金を納めていながら、その税金がどのように使われるのかについて声を上げる機会を一切持たされていなかったのです。
この考え方は、「課税は国民自身が選んだ代表者だけが行える」というイギリスの伝統的な憲政の原則に基づくものであり、1765年の印紙法(スタンプ法)をめぐる反対運動を通じて広く浸透していきました。
イギリス政府の反論
これに対しイギリス政府は、植民地はグレートブリテン王国の一部ではないため、植民地の人々に議会での代表権を認める資格はないと主張しました。さらに、植民地の人々はすでに、彼らの最善の利益のために行動するイギリス政府によって「事実上代表されている」という立場(仮想代表論)を取りました。
対立の深化と独立戦争へ
しかし、植民地の人々はこうした説明を受け入れることはありませんでした。遠く離れたロンドンの議会が、植民地の実情を理解せずに一方的に税を課すことに強く反発し、代表権の付与を求め続けたのです。
こうして「代表なくして課税なし」というスローガンは、単なる税制への抗議を超えて、イギリスの支配そのものへの抵抗の象徴となり、やがてアメリカ独立戦争の戦闘口号として全植民地に響き渡ることになりました。1776年の独立宣言へと至る流れの中で、この言葉は自由と自己統治の原則を示す歴史的な標語として記憶されています。