富と香辛料への渇望
コロンブスが航海に乗り出した最大の動機は、アジアへ直航する海路を切り開くことにありました。15世紀後半のヨーロッパでは、インドや中国は黄金や宝石、そして胡椒をはじめとする貴重な香辛料に満ちた「富の宝庫」として知られていました。コロンブス自身も、マルコ・ポーロの『東方見聞録』をはじめとする数多くの文献を読み込み、東洋の豊かさに強い憧れを抱いていたのです。
しかし当時、ヨーロッパとアジアを結ぶ伝統的な陸上交易路はオスマン帝国によって支配されており、東方へ向かうには莫大な関税と危険を伴う長い旅が避けられませんでした。香辛料は肉の保存や薬用として不可欠な商品でありながら、中継貿易を経るごとに価格が高騰していたため、誰よりも先に安価で直接仕入れる航路を確立することが、巨大な富を手にする鍵となっていたのです。
そこでコロンブスは、オスマン帝国の支配する陸路を経由せず、大西洋を西へ進めばアジアに到達できるという独自の理論に基づき、新しい航路の発見を決意しました。地球は球体であるという考え方をもとに、彼は西回りの航海こそがインドや中国への近道になると確信し、スペイン王室の支援を受けて歴史的な航海へと踏み出したのです。