クレイトン独占禁止法(Clayton Antitrust Act)は、1890年に制定されたシャーマン独占禁止法を補完するため、1914年にアメリカ合衆国議会で可決された法律です。シャーマン法だけでは対応しきれなかった独占の形成や反競争的な事業慣行への対処を強化することを目的としていました。
クレイトン法が禁止する主な行為
同法は、反競争的とみなされる以下のような事業慣行を禁止しています。
- 価格差別(同一商品を異なる買手に異なる価格で販売する行為)
- 排他取引契約(取引先に自社製品のみを扱わせる取り決め)
- 抱き合わせ販売(ある商品の購入条件として別の商品の購入を義務付ける行為)
- 競争を実質的に減少させる企業合併・買収
- 重複役員制度(競合他社の取締役を兼任すること)
また、政府には独占企業の解体や、競争を実質的に損なう合併を阻止する権限が与えられました。さらに、被害を受けた事業者や個人が私的に訴訟を提起し、損害の3倍額の賠償を請求できる点も大きな特徴です。加えて、労働組合の活動を独占行為とみなさないことが明記され、労働者の団結権の保護にもつながりました。
経済規制にもたらした影響
クレイトン法はアメリカ経済の規制に多大な影響を与えてきました。独占の形成を防ぎ、市場における競争を促進することで、消費者はより低い価格と多様な選択肢の恩恵を受けています。また、大企業だけでなく中小企業にとっても公平な競争環境を整備する一助となりました。
具体的な適用例
スタンダード・オイルの分割(1911年)
スタンダード・オイル社はシャーマン法違反で有罪と認定され、34の小規模企業に分割されました。この分割により石油業界の競争が促進され、消費者価格の低下につながりました。この経験は、より実効性のある独占禁止法制の必要性を示し、クレイトン法制定の背景となりました。
ブラウン・シューズ事件(1962年)
1962年、ブラウン・シューズ社による靴小売チェーン「キニー」の買収は、クレイトン法第7条(合併規制)に基づき最高裁判所によって差し止められました。同条項が実際に適用された初期の重要な事例であり、業界内の競争を減少させる合併を阻止する先例となりました。
P&Gによるクロロックス買収の阻止(1967年)
1967年、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)による家庭用漂白剤大手クロロックスの買収は、連邦取引委員会(FTC)の申し立てを受け、最高裁判所によって阻止されました。大手メーカーが関連市場の有力企業を傘下に収めることで競争が損なわれるおそれがあると判断された事例です。
現代における意義
今日でも、FTCと司法省(DOJ)はクレイトン法第7条に基づいて企業合併の審査を行っており、競争を実質的に減少させるおそれのある大型合併に対しては差し止めや条件付き承認が実施されています。テクノロジー業界を中心に独占が問題視される現代において、その役割はますます重要性を増しています。
まとめ
クレイトン独占禁止法は、独占のもたらす弊害から消費者と市場を守り、公正で競争的な市場環境を維持するうえで極めて重要な法律です。政府が市場の公平性を確保する役割を担うべきだという原則を、今に伝える存在といえるでしょう。