古代の歴史

ギリシャ悲劇とは?特徴・三大悲劇詩人と代表作をわかりやすく解説

ギリシャ悲劇とは、古代ギリシャで最も盛んに上演された演劇(ドラマ)のジャンルの一つです。現存する最古の演劇形式とされており、後世の西洋演劇の基礎を築いた重要な芸術様式として知られています。

ギリシャ悲劇を代表するのは、アイスキュロス(紀元前524年~456年)、ソフォクレス(紀元前496年~406年)、エウリピデス(紀元前480年~406年)という三大悲劇詩人です。彼らの作品は今日まで読み継がれ、舞台や映画などさまざまな形で現代にも影響を与え続けています。

ギリシャ悲劇とは?特徴・三大悲劇詩人と代表作をわかりやすく解説▲悲劇と喜劇を象徴する演劇用マスク

ギリシャ悲劇の特徴まとめ

ギリシャ悲劇は、ギリシャで最初に誕生した演劇ジャンルです。その後に登場したのが喜劇と悲喜劇ですが、当時のギリシャ人にとってこれらは悲劇より格下の「小ジャンル」とみなされていました。

その理由の一つは、登場人物の違いにあります。悲劇の主人公は庶民ではなく、神々、半神( demi-god)、神話上の英雄といった高貴で偉大な存在でした。一方、喜劇にはごく普通の人々が登場します。

また、審査員の構成にも差がありました。悲劇の審査員は貴族階級から選ばれた人々だったのに対し、喜劇では観客の中から一般市民が選ばれていました。

悲劇の物語は、人間の激情から生まれる悲壮で劇的な出来事を描くもので、すべての作品に共通する特徴があります。それは終始張り詰めた緊張感と、不幸で悲劇的な結末です。

アリストテレスのいう「カタルシス」

ギリシャの哲学者アリストテレス(紀元前384年~322年)は、著書『詩学』の中で、悲劇を観客に登場人物の感情を伝えることができる「大ジャンル」であると評価しました。

彼が定義したこの過程こそが「カタルシス(浄化)」です。観客は舞台上の悲劇を見ることで、感情の浄化や発散を経験します。つまりカタルシスとは、悲劇によって喚起された感情や情動が解放される現象を指すのです。

ギリシャ劇場の起源

古代において、演劇はギリシャ文明の発展において非常に重要な役割を果たしていました。

その起源は、酒と豊穣の神ディオニュソスに捧げられた祝祭にさかのぼります。ディオニュソスを讃える歌である「ディテュランボス(賛歌)」を演じる中で、次第に劇的な表現が形づくられていきました。

こうしたディオニュソス崇拝の儀礼が少しずつ洗練され、紀元前550年頃のアテネにおいて、新たな芸術——ギリシャ劇場——が誕生したのです。

三大悲劇詩人と主な作品

ここで、最も著名なギリシャの悲劇詩人三人と、それぞれの代表作をご紹介します。

アイスキュロス

  • 『縛られたプロメテウス』
  • 『ペルシア人』
  • 『アガメムノン』

ソフォクレス

  • 『オイディプス王』
  • 『アンティゴネ』
  • 『エレクトラ』

エウリピデス

  • 『メデイア』
  • 『トロイアの女たち』
  • 『バッコス信女(バッカイ)』

豆知識:悲劇の語源は「山羊の歌」?

ギリシャ語で悲劇を意味する「トラゴイディア(tragoedia)」は、「トラゴス(tragos/山羊)」と「オイデー(oidé/歌)」という二つの言葉から成り、直訳すると「山羊の歌」となります。

これは、ディオニュソスを讃える祝祭の際に、山羊が生贄として捧げられていたことに由来すると考えられています。

また別の説では、「悲劇」という言葉は、祝祭で一部の男たちが身につけていたサテュロス(上半身が人間、下半身が山羊という神話上の生物)の衣装との関連を指摘するものもあります。