
犬は「人間の親友」と呼ばれるが、一匹の猫がその称号に匹敵する功績を残した。その名はサイモン。イギリス海軍は今なお、この英雄猫を讃え続けている。サイモンはイギリス海軍フリゲート艦HMSアメジストのマスコットだった。国共内戦の最終局面、同艦は毛沢東率いる人民解放軍に長江で包囲され、なんと101日間も身動きが取れなくなったのだ。
長江で砲撃を受けたアメジスト号
1949年4月、アメジスト号は上海から南京へ向かっていた。南京の英国大使館員の避難作戦を支援するためである。しかし航行中に毛沢東軍の砲撃を受け、損傷のため座礁してしまう。イギリス側は懸命に交渉したが、共産党側は艦の修理も、乗員の退避も、食料の補給も一切認めなかった。
重傷を負いながらも生き延びた猫
包囲が続く中、イギリス乗員たちは次第に飢えに苦しみ始めた。脱出路はすべて断たれ、時折砲弾も飛来していた。サイモンも中国軍の砲弾の破片で重傷を負う。それでも彼は自力で船内の医務室まで這っていき、破片4個を摘出してもらった。しかし容態は極めて深刻で、誰もが彼は夜を越せないと思っていた。
数百匹のネズミと戦い、士気を守る
だが、九死に一生を得るのが猫というものだ。サイモンは奇跡的に回復し、受けた介護の恩に報いるべく、船内に蔓延していた何百匹ものネズミの駆除に取りかかった。艦内の食料庫を守り切り、多くの乗員の命を救ったのである(22名は戦死した)。しかしこの小さな猫の最大の功績は、包囲下で追い詰められた乗員たちの士気を保ち続けたことだった。艦長から最後の水兵まで、全員が彼をお守りのように大切にしたのである。
101日間の包囲の末に
それは現実となった。3ヶ月と11日に及ぶ包囲戦の末、192名の乗員のうち生存者はわずか60名ほどになっていたが、他のイギリス艦艇が中国軍の封鎖を突破し、大穴の開いたアメジスト号をけん引して救出したのだ。アメジスト号は1949年11月1日、イギリスへ無事帰還した。だが、小さな英雄には残酷な結末が待っていた。
ディッキン・メダルを受章した唯一の猫
サイモンの傷は感染し、帰還から2週間後についに息を引き取った。香港の港で17歳のイギリス人水兵に拾われたサイモンは、イギリス海軍動物墓地に正式な軍葬をもって埋葬された。困難な状況下で乗員の士気を高めた功績により、「動物版ヴィクトリア十字章」とも呼ばれる特別勲章ディッキン・メダルを授与されている。この勲章はこれまで65頭の動物に授与されてきたが、その内訳は伝書鳩32羽、犬29頭、馬3頭、そして猫はサイモンただ一頭なのである。