「嘔吐物収集者」という職業は本当にあったのか?
産業革命期のイギリスについて語られる際、「嘔吐物収集者(ヴォミット・コレクター)」という奇妙な職業の話を目にすることがあります。しかし、結論から言えば、このような職業が実際に存在したことを裏付ける歴史的証拠は一切ありません。
なぜ「嘔吐物収集者」の話が広まったのか?
この説は、インターネット上で「知られざる過去の職業」として紹介されることが多く、あたかも史実であるかのように拡散されてきました。当時の都市部では衛生状態が劣悪で、路上には汚物があふれていたため、「そんな職業があってもおかしくない」という想像が話を一層信憑性のあるものに見せてしまったのです。
歴史的記録が示すもの
産業革命期の労働に関する記録、新聞記事、自治体の文書、職業別の人口調査などを調べても、「嘔吐物を専門に収集する職業」についての言及は確認できません。確かに当時は「夜の土砂運び(Night Soil Man)」のように、し尿やゴミを処理する労働者は実在していました。こうした実在した清掃関連の職業と混同され、脚色された可能性があります。
まとめ
産業革命期に「嘔吐物収集者」と呼ばれる専門職が存在したという確かな証拠はなく、これは歴史上のどの時代においても同様です。興味深い逸話として広まりやすい現代ならではの「歴史の都市伝説」と捉えるのが妥当でしょう。歴史に触れる際は、一次資料や信頼できる文献に基づいた情報を選ぶことが大切です。