アメリカ合衆国議会は、大統領選挙における行き詰まり(デッドロック)を防ぐために、「選挙人団(Electoral College)」と呼ばれる独自の制度を設けました。この制度は現在のアメリカ大統領選挙の中核をなす仕組みであり、その成り立ちには建国当初からの政治的な駆け引きが反映されています。
選挙人団制度とは何か
選挙人団とは、各州から選ばれた「選挙人」によって構成される集団であり、彼らが正式に大統領および副大統領への投票を行います。各州に割り当てられる選挙人の数は、その州が連邦議会に送り出す上院議員と下院議員の数の合計と同じです。つまり、人口の多い州ほど多くの選挙人を持つことになります。
州ごとの勝者が選挙人票を総取りする仕組み
多くの州では、一般投票で最多得票を獲得した候補者が、その州の選挙人票をすべて獲得する「勝者総取り方式」が採用されています。しかし歴史上、全国の一般投票では最多得票を獲得しながらも、選挙人団の投票では敗れて大統領になれなかった例がいくつか存在します。これは、有力候補が複数の重要な州で僅差の勝利にとどまり、結果的にそれらの州の選挙人票を失った場合などに起こりうる現象です。
18世紀末に生まれた「妥協の産物」
選挙人団制度は18世紀後半、憲法制定の過程で誕生しました。大統領を国民の直接投票で選ぶべきだと主張する派閥と、議会による選出を望む派閥との対立を解消するための妥協案として設計されたものです。この制度の目的は、少数の人口の多い州の意向だけでなく、幅広い州の連合によって大統領が選出されることを保証することにありました。
批判と評価が交錯する制度
選挙人団制度については、「民主的ではない」という批判が根強くあります。一般投票の総得票数で劣っていても、選挙人票で勝ち越せば大統領になれる可能性があるためです。その一方で、この制度は多様な州の利害を調整し、アメリカの政治体制全体の安定性を支えてきたとして高く評価する声もあります。建国から200年以上経った今も、この制度の是非をめぐる議論は続いています。