古代の歴史

ナラバス:ハミルカル・バルカに忠誠を誓ったヌミディアの王子

ナラバス(Naravas)は、古代北アフリカのヌミディア出身の王子であり、優れた戦略家であると同時に、騎馬術に長けた人物として知られています。彼はカルタゴの名将ハミルカル・バルカを心から敬慕しており、その憧れを現実のものとしたのが、紀元前241年頃から続いた「傭兵戦争」でした。

ハミルカルへの帰順

紀元前239年、ナラバスは2000騎の騎兵を率いてハミルカルの陣営に到着し、自らの忠誠を誓って帰順しました。当時のカルタゴは、マトーやスペンディウスらが率いる反乱軍――かつてカルタゴに雇われていたリビア人傭兵たち――との激戦のさなかにありました。ヌミディアは屈強な騎兵の供給源として名高く、ナラバスの離反は反乱軍にとって痛手となり、戦況を大きく左右する出来事でした。

「ラ・シー(ノコギリ)」の峡谷での戦い

ナラバスが率いた機動性に富んだ効率的な騎兵部隊は、ハミルカルの作戦に多大な貢献を果たしました。中でも有名なのは、リビア人指導者マトーの傭兵部隊を「ラ・シー」と呼ばれる峡谷(隘路)へ追い込み、降伏へと追い詰めた戦いです。地形を活かした包囲作戦において、ナラバスの騎兵の機動力が決定的な役割を担ったと伝えられています。

戦後――サランボーとの結婚

紀元前237年、傭兵戦争はカルタゴの勝利によって幕を下ろしました。戦後、ナラバスはハミルカルの娘サランボーとの結婚を許され、名将バルカ家の女婿として迎え入れられました。この縁組は、輝かしい戦功への報酬であると同時に、カルタゴとヌミディアとの同盟関係を一層強固にする政治的意義も持っていたと考えられています。なお、ナラバスとサランボーの物語は、ギュスターヴ・フローベールの歴史小説『サランボー』の題材にもなっており、古代地中海世界のドラマとして今も語り継がれています。