アステカにおける戦いの神であり、同時に主神でもあったのがウィツィロポチトリ(Huitzilopochtli)です。その名は「南のハチドリ」または「左側のハチドリ」を意味するとされ、アステカ神話において最も重要視された神格でした。
テノチティトランの守護神
ウィツィロポチトリは、アステカ帝国の首都テノチティトラン(現在のメキシコシティ)の守護神とされていました。伝説によれば、アステカ人は彼の導きに従い、湖中の島に都を築いたといわれています。都の中心には彼を祀る大神殿(テンポ・マヨール)がそびえ立ち、国家宗教の中核を担いました。
戦士たちの守護者
「戦士の神」としても知られるウィツィロポチトリは、アステカの戦士たちの守護者であると信じられていました。当時の戦争は単なる領土拡大ではなく、捕虜を生贄として捧げ、太陽の運行を支える神聖な儀式とみなされていたため、戦いの神である彼は帝国の軍事政策とも深く結びついていたのです。
ハチドリの仮面と青い顔
ウィツィロポチトリは、ハチドリの仮面(または兜)を身につけ、顔を青く塗った若い戦士の姿で描かれることが多く、太陽と強く関連づけられていました。彼は毎日空を駆け巡る太陽そのもの、あるいはそれを守り抜く存在として捉えられ、人々の信仰を集めていました。
神話に残る誕生譚
神話では、ウィツィロポチトリは大地の女神コアトリクエの子として奇跡的に誕生し、月の女神である姉コヨルシャウキや星々の兄弟たちから母を守るために戦ったと語られています。この物語は「光が闇を打ち破る」というアステカ人の宇宙観を象徴するものであり、彼の神格をさらに高める存在となりました。