1066年に起こったヘイスティングスの戦いは、ノルマン・コンクエスト(ノルマンディー公ギヨームによるイングランド征服)の決定的瞬間であり、イギリス史上最も重要な転換点の一つとされています。この戦いについて学ぶには、中世に書かれた貴重な一次資料が数多く現存しています。ここでは、代表的な史料を7つご紹介します。
1. バイユー・タペストリー
全長約70メートルにおよぶ刺繍布で、1066年のノルマン人のイングランド侵攻からヘイスティングスの戦いまでの物語を、絵巻物のように描いています。当時の武器、服装、船、戦術を目で見て知ることができる唯一無二の資料です。現在はフランスのバイユーにあるバイユー博物館に収蔵され、一般公開されています。
2. アングロサクソン年代記
9世紀から12世紀にかけてアングロサクソン人の修道士たちによって編纂された年代記の集合体です。複数の写本が現存しており、ヘイスティングスの戦いについても詳細な記述が含まれています。勝者であるノルマン側ではなく、敗者となったアングロサクソン側の視点を反映している点で、特に価値の高い史料です。
3. カルメン・デ・ハスティンガエ・プロエリオ(ハイスティングスの戦いの歌)
アミアン司教ギー(ギド)によって、戦いの直後にラテン語で書かれた叙事詩です。戦闘の様子を生き生きと描写しており、成立時期が戦いの直後であることから、当時の雰囲気を伝える資料として高い注目を集めています。
4. オルデリック・ヴィタリス『教会史』
11世紀から12世紀に活躍したベネディクト会修道士オルデリック・ヴィタリスの歴史書『教会史』には、ヘイスティングスの戦いに関する詳しい記述があります。彼はノルマンディーのサン・トメール修道院で育ち、関係者の証言などを集めた包括的な記録を残しました。
5. マルムズベリーのウィリアム『イングランド王列伝』
12世紀のベネディクト会修道士マルムズベリーのウィリアムは、「英国史学の父」とも称される優れた歴史家です。その主著『イングランド王列伝』(ゲスタ・レグム・アングロルム)には、ヘイスティングスの戦いの経緯が記されています。
6. ハンティンドンのヘンリー『イングランド史』
12世n
12世紀の聖職者・歴史家であるハンティンドンのヘンリーが著した『イングランド史』(ヒストリア・アングロルム)にも、ヘイスティングスの戦いに関する記述が含まれています。文体が明快で読みやすく、後世の歴史家たちにも広く参照されました。
7. マシュー・パリス『大編年史』
13世紀のベネディクト会修道士マシュー・パリスは、セント・オールバンズ修道院出身の中世イングランド最大の歴史家とされます。その代表作『大編年史』(クロニカ・マヨラ)には、ヘイスティングスの戦いを含むイングランドの歴史が網羅的に記されています。
まとめ
ヘイスティングスの戦いについては、視覚資料であるバイユー・タペストリーから、複数の修道士や聖職者による年代記・歴史書まで、多岐にわたる史料が現存しています。これらの資料を読み比べることで、勝者であるノルマン側と敗者であるアングロサクソン側の双方の視点から、この歴史的な戦いを多角的に理解することができるでしょう。