5人の科学者チームが、粘土と棒を使って作った人工の尻尾をニワトリのお尻に接着しました。すると、そのニワトリはまるで恐竜のように歩き始めたのです。この一風変わった研究により、研究者たちは「まず人を笑わせ、そして考えさせる」研究に贈られるイグノーベル賞(2015年・生物学部門)を受賞することとなりました。
なぜニワトリなのか?
絶滅した恐竜の行動や姿かたちは、化石の骨だけから推測するしかなく、研究者にとって大きな謎です。しかし科学にとって幸いなことに、ティラノサウルス・レックスをはじめとする二足歩行恐竜の直系の子孫が、今も私たちの身近に生きています。そう、鳥類こそが恐竜の子孫なのです。
チリの科学者たちは、ニワトリに揺れる尻尾を付けることで、骨が恐竜のように成長するかどうかを検証することにしました。
恐竜のような歩き方
二足歩行の恐竜は、このような揺れる尻尾を持っていたため、重心がニワトリよりも後ろ寄りでした。その結果、歩き方も現代の鳥とは異なっていたと考えられますが、具体的にどんな歩き方だったのかは、骨だけでは判明していません。
実験の結果、人工の尻尾を付けられたニワトリは、通常とは異なる骨の発育を遂げました。大腿骨と脛骨の間の角度が大きくなり、重心は恐竜と同様に後方へ移動。膝の柔軟性は低下し、膝ではなく腰を使った歩行へと変化したのです。
もちろん、科学者たち自身も、このニワトリが完璧な恐竜ではないことを認めています。例えば、小さな前脚の代わりに翼を持っています。それでも、生きた鳥類に手を加えることで、恐竜の体型と運動様式の進化をより深く理解できると彼らは考えています。本研究によって、「恐竜の尻尾が、腰主体の独特な歩行をもたらしていた」という説が裏付けられた可能性があります。


上の画像が通常のニワトリ、下が人工の尻尾を付けた「ダイノ・チキン」です。ダイノ・チキンは「腰を多く使う」歩き方をするだけでなく、体の傾き方にも違いが見られます。(出典:Grossiほか、PLOS 2014年)
その他の「恐竜ニワトリ」研究
実験動物としては、ニワトリは不遇な役回りを担うことが多い存在です。すべての鳥類は恐竜から進化しましたが、中でもニワトリは遺伝的に最も恐竜に近いとされています。
過去には、くちばしの起源を解明するために、ニワトリの胚に対する遺伝学的操作が行われました。くちばしの成長に関わる遺伝機能を停止させると、胚は代わりに吻(ふん)を発達させました。研究者たちが驚いたことに、それはまさにヴェロキラプトルのような口先を持つニワトリだったのです。
「これは完全に予想外の結果でした。単純な一つのメカニズムが、大きくて予想外の影響を及ぼしうることを示しています」と、研究チームの一員であるバート=アンジャン・ブララー氏は『Yale News』のインタビューで語りました。
「チキノサウルス」への夢
ヴェロキラプトルの口先を持つニワトリでは満足しないのが、古生物学者のジャック・ホーナー氏です。彼はニワトリから「本物の」恐竜を作り出すことを目指しています。
ホーナー氏は映画『ジュラシック・パーク』で科学顧問を務めた縁もあり、以来、絶滅した恐竜を現代に蘇らせることに情熱を注いできました。しかし、恐竜の骨格からDNAを抽出することは不可能でした。そこで2009年、彼は全く別のアプローチを提唱します。
ホーナー氏の理論によれば、遺伝的なスイッチを操作することで「本物の」恐竜を作ることが可能だといいます。恐竜は進化の過程で現代の鳥類へと姿を変え、その過程で新しい遺伝子が獲得されてきました。しかし、古い遺伝子は消えたのではなく、休止状態になっているだけだと考えられます。そこで彼は、新しく獲得された遺伝子をオフにし、眠っている古代の遺伝子を再びオンにしようと試みているのです。
こうして誕生する生物を、ホーナー氏は「チキノサウルス(Chickenosaurus)」と呼んでいます。果たしてその動物がどのような姿になるのか、そしていつの日か実現するのか――今のところ、まだ誰にも分かりません。