ナクベ(Nakbe)は、グアテマラ北部ペテン地方の熱帯雨林の深い密林の中に位置する考古学遺跡です。近隣のエル・ミラドールなどの遺跡とともにミラドール盆地の遺跡群を形成し、マヤ文明における最古級の祭祀センターの一つとして高く評価されています。
発見と調査の歴史
ナクベの存在が初めて確認されたのは、1930年に撮影された一連の航空写真によるものです。その後、1962年に考古学者イアン・グラハム(Ian Graham)が現地調査を実施し、この遺跡に「ナクベ」という名を与えました。
さらに1980年代から1990年代にかけて行われた体系的な発掘調査では、マヤ文化の発展に関する既存の理論を大きく見直すことにつながる、極めて重要な情報が次々と明らかになりました。
巨大建造物が覆した年代観
ナクベを特徴づける巨大な石積みの基壇、神殿、そしてその他の比較的高い建造物群は、当初、後期先古典期(後期形成期:紀元前300年~紀元後100年)に典型的な建築と考えられていました。
ところが、放射性炭素年代測定の結果、これらの大規模建造物は実際には紀元前600年~400年頃、すなわち中期先古典期(中期形成期)にまでさかのぼることが判明したのです。この時代はそれまで、低い石造基壇の上に住居を構える程度の簡素な村々が広がるだけの時代であるとされてきました。
つまりナクベの発見は、「壮大な記念碑的建築はより後の時代にのみ出現する」という従来の通説を覆すものであり、マヤ文明の起源と発展過程に対する理解を根本から変える契機となりました。
繁栄の終焉
ナクベからは、マヤ文化のほぼすべての時代に属する遺物や遺構が発見されています。しかし、後期形成期の始まり以降、この地が再び重要な中心地となることはありませんでした。その役割は近隣の大型都市へと受け継がれ、ナクベは密林の中へと静かに還っていったのです。