よっこらせ、注げ!――風を待つ船乗りたちの苦闘「ヘイ、ホー、注げ! ヘイ、ホー、杯を掲げろ!」――海の物語には、ラム酒と帆を膨らませる風が欠かせない。まともな船ならラム酒が尽きることはまずないが、風となると話は別だ。ここでは、19世紀の船乗りたちが望む風を呼び込むために実践した海の「魔術」の数々を紹介しよう。現代では、外洋を航行するほとんどすべての船が風に頼らない動力を持っているため、こうした悩みとは無縁だ。しかし19世紀までの時代は事情が違った。ときには船が数週間ものあいだ、完全な無風状態で漂流することもあった。最悪なのは帰航の途上である。船乗りたちは際限なく海に足止めされ、その心は早くも乾