1917年の秋、ロシアの権力は文字通り路上に転がっていた。国とヨーロッパの未来を懸けた劇的な駆け引きに参加していたのは、ボリシェヴィキや白軍だけではない。クレムリンの陰では無慈悲な諜報戦が勃発しており、その渦中にいたのは……実に風変わりな人々だった。 元オルガニスト、ポール・デュークス まずはポール・デュークスから紹介しよう。彼は教会オルガニストの息子だったが、10代で両親に反発して家出し、ポケットにはわずか4ポンドしか入っていなかった。ヨーロッパ大陸を放浪するうちに旧ポーランド領にたどり着き、英語教師として職を得る。しかしすぐに仕事に飽きた彼は、さらに東へ――サンクトペテルブルクへと向かった