歴史上、自然災害や天変地異によって消えてしまった島の記録は決して珍しくない。また、盗作や不正競争を見破るため、熱心な地図製作者が意図的に架空の島(ファントム・アイランド)を地図に描き込んだという例も存在する。しかし、ここで取り上げる事例には、そうした話とは一線を画す独特の魅力がある。プトレマイオスの『地理学』と失われた原図クラウディオス・プトレマイオスは、2世紀にアレクサンドリアの図書館で活躍したギリシア系エジプト人の地理学者である。西暦150年頃、彼は生涯最大の業績の一つとなる『地理学(ゲオグラフィア)』を著し、当時知られていた世界の姿を体系的に記述した。この著作の写本には地図が添えられてい