世界史

考古学的発見

  • 革新こそローマ軍団の先鋒――4世紀ローマの戦争兵器を3D復元

    研究者たちが、4世紀ローマが生んだ恐るべき戦争兵器の数々を3Dで再現した。本稿は、2018年3月号(第853号)Sciences et Avenir誌掲載記事からの抜粋である。古代の図面をもとにした15世紀の写本に描かれた「牛動力の外輪船(リブルナ)」。牛の力で外輪を回して推進する、当時の革新的な装置の一つである(上は3D復元イメージ)。本稿はベルナデット・アルノーによる記事「革新、ローマ軍団の先鋒」の抜粋。全文は2018年3月21日まで店頭に並ぶSciences et Avenir第853号で読むことができる。同号の表紙テーマは「宇宙を形づくる魔法の数字」。帝国を取り巻く危機と、一冊の古文書

  • 失われた古代都市を探し当てる最先端テクノロジー――現代の「インディ・ジョーンズ」たち

    衛星画像からレーザー測量まで、考古学を変えるハイテクの数々衛星画像、ライダー(LiDAR)……。高性能な技術的手段が次々と投入され、忘れ去られた古代都市の痕跡が明るみに出されつつある。映画『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(2008年)のレイ・ウィンストンとハリソン・フォード。本記事はベルナデット・アルノーによるもので、『サイエンス・エ・アヴニール』851号(2018年1月号)特集「失われた都市の大冒険」からの抜粋である。衛星画像、ドローン、ライダー(航空機搭載型スキャナーによる光検出・測距リモートセンシング)、放射温度カメラ、地震波トモグラフィー、地下比抵抗測定……。考古学者

  • 志布志で発見された驚異の鉄製胸甲――1500年前の短甲が語る古墳時代の権力者像

    日本の九州で、約1500年前の驚くべき武具を納めた古代の墓が発見されました。日本・九州の古墳から出土した珍しい鉄製胸甲「短甲」。約1500年前の武具が奇跡的な保存状態で見つかりました。道路工事で偶然見つかった5世紀の豪華な墓この優れた武具は西暦5世紀のもので、2017年12月下旬、鹿児島県志布志市での道路工事中に偶然発見されました。工事によって約1500年前の格式高い古墳が姿を現し、石棺のそばには「短甲(たんこう)」と呼ばれる鉄製の胸甲が安置されていたのです。フランス国立東洋言語文化研究所(INALCO)所属で、日本の鉄器時代を専門とする考古学者ローラン・ネスプルー氏は、科学誌「サイエンス・エ

  • ポンペイでハイテク発掘プロジェクトが始動――2000年眠る未踏区域に挑む

    西暦79年のヴェスヴィオ火山噴火以来、人間の手が一切加わってこなかった区域で、最新技術を駆使した考古学発掘の準備が進められている。ヴェスヴィオ火山を背景に望むポンペイの街並み「素晴らしい発見が期待できる」「素晴らしい発見が期待できます!」と、イタリア・ポンペイ考古学公園のマッシモ・オザンナ館長は意気込む。2018年3月9日(金)、ミラノ工科大学で開催されたイタリア文化遺産の将来に関する会議の場で、ヴェスヴィオ火山の噴火により滅亡した古代都市ポンペイの、全く新しい区域における発掘調査計画が発表されたのである。ANSA通信によると、第二次世界大戦終結以来初となる大規模な発掘・調査キャンペーンが、ま

  • エジプトの刺青ミイラが秘める謎――世界最古の具象的タトゥーが語る先王朝時代

    自然乾燥ミイラが明かす、世界最古の具象的タトゥーエジプトの自然ミイラから、世界最古となる「具象的な入れ墨(タトゥー)」が発見されました。エジプト・ジェベレイン出土の「ミイラA」の刺青を捉えた赤外線画像。長らくエジプト学者たちは、ナイル渓谷における古代の入れ墨は女性のミイラにのみ見られるものだと考えてきました。ところが、赤外線画像解析の活用により、1900年からロンドンの大英博物館で展示されてきた2体の自然乾燥ミイラに、予想外の刺青が確認されたのです。現在のルクソール南方に位置するジェベレイン地方で1899年に発見されたことから「ジェベレイン・ミイラ」と呼ばれるこの2体は、上下エジプト統一以前の

  • 荒廃した都市の再生へ――ユネスコが挑む「モスルの魂を蘇らせる」プロジェクト

    2018年9月10日、ユネスコとイラク政府の共催により、「モスルの魂を蘇らせる(Reviving the Spirit of Mosul)」イニシアチブに関する初の国際会議がパリで開催されました。これを機に、ユネスコ世界遺産センター・アラブ諸国部門責任者のナダ・アル・ハッサン氏がフランスの科学誌『Sciences et Avenir』に語ったインタビューを、改めてご紹介します。2018年3月16日、イラク・モスルにて撮影。青い幕には、スンニ派ワクフ(宗教財産管理組織)とユネスコによるヌーリー・モスク再建の提携発表が掲げられています。【国際会議】2018年9月10日、ユネスコはイラク政府と協力し

  • クロマニヨン人の顔は結節に覆われていた――2万7千年前の遺伝病「神経線維腫症」の痕跡

    クロマニヨン人の顔に隠された「病」の痕跡有名なクロマニヨン人に、ついに「顔」が与えられた。しかしそこには驚くべき事実も隠されていた――彼は遺伝性疾患を患っていた可能性があるのだ。医療人類学者フィリップ・シャルリエ氏と古人類学者アントワーヌ・バルゾー氏らが率いるフランスの研究チームは、顔に醜い結節を生じさせる「神経線維腫症」に苦しんでいたと結論づけた。クロマニヨン1号の顔と病変を示す3Dデジタル復元古人類学の新たな発見長年、「クロマニヨン人」という名称は、後期旧石器時代のヨーロッパで発見された現生人類(ホモ・サピエンス)全般を指す言葉として用いられてきた。今回、パリの人類博物館( Musée d

  • ベイルートのイエズス会アーカイブ:消えゆく中東を映す約10万点の貴重な写真群

    レバノンでは現在、他に類を見ない写真コレクションのデジタル化が進められている。そこに収められているのは、今や失われてしまった中東の姿を伝える、考古学と民族誌に関するかけがえのない証言の数々である。1938年、考古空撮の先駆者アントワーヌ・ポワドゥバールが撮影した、シリア古代都市パルミラの空中写真。至宝としてのアーカイブそれはまさに「至宝」と呼ぶべきものだ。首都ベイルートにあるサン・ジョゼフ大学東洋図書館では、レバノン人考古学者レヴォン・ノルディギアンが、約10万点に及ぶ写真資料のデジタル化作業を進めている。そのすべては、19世紀末から1960年代にかけてイエズス会士たちによって撮影されたもので

  • ポンペイの「抱擁の恋人」、DNA分析が覆す千年の定説――2人は実は男性だった

    西暦79年、ヴェスヴィオ火山の大噴火により命を落とした数多くの犠牲者。その中でも特に有名な存在が、イタリア・ポンペイ遺跡のクリプトポルティクス(地下回廊)の家から出土した「抱き合う2人」の遺体です。1922年に発見されて以来、この2人は「最期の瞬間まで愛し合った男と女」として語られ続けてきました。しかし、近年実施されたDNA分析が、この長年の定説に思いがけない転回をもたらしたのです。ポンペイ考古学遺跡のクリプトポルティクスの邸宅で発見された、「抱擁を交わす」2人の石膏像。ロマンチックな物語として受け継がれた解釈1922年の発見当時、この2体は噴火という悲惨な最期を互いの腕の中で迎えた男性と女性

  • 石板に刻まれた15世紀の聖歌がよみがえる――ブルターニュ・レンヌの修道院遺跡

    フランス北西部、ブルターニュ地方の都市レンヌ。ジャコバン修道院跡の発掘調査で出土した一枚の石板(粘板岩)に、15世紀の旋律が刻まれていたことが判明し、考古学者と音楽家の手によって、その音が現代によみがえった。解読に協力したソプラノ歌手ドミニク・フォンテーヌ氏が、その経緯を語る。レンヌのジャコバン修道院の発掘調査で発見された、15世紀の楽譜が刻まれた粘板岩。中世の小さな「石板」は、幅わずか20cmほどだった。2011年から2013年にかけてこの大規模な発掘調査を率いた国立予防考古学研究所(INRAP)の考古学者ガエタン・ル・クロワレック氏は、次のように振り返る。「出土したのは、15世紀にさかのぼ

  • ローマ史上最悪級の惨敗の地で宝物が発見――トイトブルクの古戦場から銀貨102枚

    ローマ帝国史上最悪級の軍事的惨敗の舞台となったドイツの大地から、100枚を超える古代ローマの銀貨がまとまって出土しました。この「トイトブルクの戦い」と呼ばれる大敗北は、ライン川以東への帝国拡張政策に終止符を打った出来事として知られています。 ドイツ・カルクリーゼの戦跡から出土した西暦1世紀のローマ銀貨デナリウス カルクリーゼの丘で見つかった「埋蔵財宝」 西暦9年、現在のドイツ・ノルトライン=ヴェストファーレン州カルクリーゼの丘陵地帯で、ローマ軍団3個と補助部隊合わせて約2万5000人の兵士がゲルマン諸部族により壊滅させられました。今なお数多くの遺物が眠るこのトイトブルクの地で、ミュンヘン大学

  • カリギュラ皇帝の「3隻目の豪華船」はネミ湖の底に眠るのか?

    ローマ近郊の湖で行われる水中調査2017年4月上旬、イタリア・ローマ近郊の湖で実施された調査により、ローマ皇帝カリギュラが建造した「3隻目の水上宮殿」の存在が明らかになる可能性が出てきました。1931年、イタリアのネミ湖から引き揚げられるカリギュラの船の一隻。カルビナリエリ隊員による水中探索2017年4月7日、イタリア憲兵(カルビナリエリ)と民間防衛隊のダイバーたちが、静かなネミ湖の水面を賑わせ、本格的な水中調査を開始しました。この古代の火山火口は、ローマの南東約30キロメートルに位置しています。ここには、「悪名高い」ローマ皇帝カリギュラが建造した3隻目の遊興船の遺構が眠っている可能性があるの

  • エジプト・ルクソール近郊の古代墓からミイラ8体発見――第18王朝の高官「ウセルハト」の墓か

    エジプト南部の都市ルクソール近郊で発見されたファラオ時代の墓から、ミイラ8体、色鮮やかに彩色された木製の人形棺、そして1000点を超える葬儀用の小像が見つかりました。エジプト考古省が2017年4月18日(火)に発表したもので、同省は「素晴らしい発見の連続」と評価しています。 2017年4月18日、ルクソール近郊の墓で見つかった石棺 この墓は、古代エジプト新王国時代の王墓が集中することで知られる「王家の谷」にもほど近い場所に位置しています。埋葬者の名はウセルハトであるとみられており、第18王朝(紀元前1550年~紀元前1295年)に生きた彼は、「都市の裁判官」という称号を持つ高級行政官でした。

  • スキー発祥の地をめぐる緊張――新疆アルタイの民族問題と1万年前のスキーヤーたち

    アジアプレスレビュー:今週の注目記事今週は、中国が「スキーの揺りかご」と位置づける新疆ウイグル自治区から届いたニューヨーク・タイムズ紙のレポートをはじめ、世界SF文学で存在感を急速に高める中国人作家の台頭、米朝間の武力誇示による緊迫、インドのニュートリノ観測装置建設の遅延など、多彩な話題をお届けします。冬季スポーツは中国で空前のブームを迎えている(写真は新疆)。ニューヨーク・タイムズ紙によれば、習近平国家主席は2022年北京冬季五輪の開催までに「3億人のスキーヤー」を育成するという目標を掲げているといいます。1万年前のスキーヤーと民族間の緊張中国アルタイ地方の住民――カザフ族、モンゴル族、そし

  • 草原の小さなビーナス――ロシア・ブリャンスクで出土した2万3000年前の象牙の女神像

    草原の小さなビーナス――ロシア・ブリャンスクでの発見繊細な旧石器時代の「ビーナス」像が、ロシア西部のブリャンスク州で新たに発見されました。ブリャンスクのビーナス(ロシア)両面の写真。マンモスの象牙に刻まれた傑作象牙彫刻。高さわずか5センチ。ケナガマンモスの牙の象牙に彫られた、約2万3000年前の新しい旧石器時代の「ビーナス」像が、このほど世に現れました。豊満な臀部と胸を備えたこの丸彫りの作品は、小ぶりでありながら、こうした女性小立像に共通する「古典的」な様式の基準を見事に満たしています。発見されたのは、ロシア西部ブリャンスク州のホトィリョヴォ2遺跡(Khotylyovo-2)。1993年から調

  • 10万年の差!マストドンの骨折痕がアメリカ大陸入植史を書き換えるのか?

    現在では絶滅したゾウの祖先であるマストドンの骨には、人類がこれまで考えられていたよりも10万年も早くアメリカ大陸に到達していたことを示唆する痕跡が残されていた。カリフォルニア州サンディエゴで出土したこの小石は、13万年前に人類がマストドンの骨を砕くために使った道具だった可能性がある。アメリカ大陸における人類の存在は、従来の説より11万5000年も古い――。2017年4月26日(水)、科学者たちが発表したこの「爆弾発言」は、新大陸への入植史を根本から見直すきっかけとなった。「カリフォルニアで発見された遺物は、13万年前までさかのぼる初期の定住を示唆している」と語るのは、研究を主導し、学術誌『ネイ

  • 謎めいたアフィントン・ホワイトホースの正体は「太陽を引く馬」か

    イングランド南部の白亜質の丘に刻まれた謎めいたアフィントン・ホワイトホース。その位置と向きは、太陽の軌道と深く結びついていると考えられている。イングランド南部に位置する有名なアフィントン・ジャイアントホース(白馬)の空撮画像。青銅器時代の巨大地上絵イングランド南部オックスフォードシャー州。向かい合うドラゴンヒルから望むと、白亜質の丘の斜面に刻まれた巨大な馬が、3000年以上もの間、駆け続けているのが目に入る。全長約110メートルに及ぶアフィントン・ホワイトホースは、青銅器時代ヨーロッパにおける人類の偉大な業績の一つであり、ペルーのナスカの地上絵と並び称される、世界最古級の先史時代のジオグリフ(

  • 中国の文化外交に新戦略――考古学者が「新しい外交官」に

    アジア・プレス・レビュー。今週のアジアとフランスの報道から注目のトピックをお届けする。文化的影响力の手段としての中国考古学、シンガポール国立博物館の「バーチャル入館者」、ネパール地震被災者の置かれた窮状、就職活動のための美容整形など。 中国の考古学者たちは、西洋の専門知識から自立を果たした。 考古学者は「新しい外交官」だ 中国の世界への開放は、輸出や国外での経済プレゼンスの問題だけではない。上海発のオンラインメディア「Sixth Tone」が論壇を提供した中国雑誌『文物(Wenwu)』の記者・王超(ワン・チャオ)氏は、中国の考古学者たちを「新しい外交官」と呼ぶ。海外での発掘調査に招かれた彼

  • エジプト・ルクソールで発見された4000年前の例外的な埋葬庭園

    4000年前の埋葬庭園がルクソール近郊で発掘されるスペインの考古学チームが、エジプトのネクロポリス(死者の都)「アブ・エル・ナーガ・ドラーア」において、埋葬庭園の遺構を発掘しました。発見されたのは、古代テーベ(現在のルクソール)近郊に位置する、約4000年前の古代埋葬庭園です。初めて姿を現した古代エジプトの葬祭庭園古代エジプトでは、植物や花、果樹が、壁画や絵画に描かれているように(下図参照)、死者が来世へ旅立つ最期の道のりに添えられていました。今回、スペインの研究チームが、ルクソール近郊アブ・エル・ナーガ・ドラーアのネクロポリスで、そうした葬祭庭園の一つを初めて発見したのです。2002年に開始

  • デカルトの脳のデジタル分身——頭蓋骨から3D復元された哲学者の脳

    17世紀を代表する哲学者・数学者ルネ・デカルト。とうに失われたはずのその脳が、頭蓋骨に刻まれた痕跡をもとに三次元的に再現され、詳細な分析が可能になった。解剖図:ルネ・デカルトの脳の3D画像。天才の脳には特別な特徴があるのか?天才の脳には何か特別な特徴があるのだろうか?それは形状や表面から読み取れるものなのだろうか?アインシュタインの脳が薄切りにされて研究されたことでも知られるように、この問いは科学者たちを長年悩ませてきた。今回、研究者たちはデカルトの頭蓋骨に着目し、改めてこの問いへの答えを探ろうとしている。『方法序説』の著者であり、1650年2月11日にストックホルム(スウェーデン)で亡くなっ

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