著者:ホセ・カルロス・メンドサ・バルデス、クラウディア・フローレス・フエンテス はじめに 「人間は自然をもたず、歴史のみを有する」――20世紀スペインを代表する哲学者オルテガ・イ・ガセットのこの言葉は、きわめて示唆に富んでいます。過去という捉えどころのないものへの省察に力点を置いた彼の視座は、西洋化された感覚で聞けばやや奇異に映る犯罪類型の核心を突いています。すなわち、慣習法に基づいて成立したインカの法体系において、「怠惰」は賢明にも規律の対象とされていたのです。その痕跡は、ことわざのかたちで、今日でも南米大陸の各地に確認することができます。 インカ帝国における労働力 農業・牧畜・鉱業を経済