第二次世界大戦中、連合国の一員であるはずのアメリカの巨大企業が、敵国ナチス・ドイツに燃料を供給し続けていた――。これは、戦後も長らく語られることの少なかった、戦争史上最大級のスキャンダルである。 世界最大の石油会社とIGファルベンの蜜月 1941年当時、スタンダード・オイルは世界最大の石油会社だった。社長を務めていたのはウィリアム・ファリス、最高経営責任者はウォルター・ティーグルである。ティーグルは1920年代半ばからドイツとの関係構築に注力し、とりわけ化学産業大手IGファルベンの幹部ヘルマン・シュミッツと緊密な関係を築いていった。 ほどなくして、親ナチス派のイギリス人実業家サー・ヘンリー